今年(2015年)のグランプリは大友克洋!
1月29日夜、第42回フェスティバルのグランプリ受賞作家が発表され、
大友克洋氏の受賞が決まりました。大友先生おめでとうございます!
日本人のグランプリ受賞は今回が初めてです。
フェス公式サイトの特設ページ[仏語]
http://grandprix.bdangouleme.com/
グランプリ決定を受けて、大友克洋氏からのメッセージ動画
「表現の自由・シャルリー賞」を創設
昨1月7日のシャルリー・エブド襲撃テロ事件を受けて、アングレームでは「表現の自由・シャルリー賞」を創設。
こちらは、通常通り、フェスティバル最終日・2月1日(日)の閉会式(最優秀作品を始め、各賞授賞式も兼ねる)で授賞するが、事件で亡くなったシャルリー・エブドの漫画家5名を第1回受賞者とすることに決定した。
5人の作家については、ShoProBooksさんの海外コミック情報サイト『BDfile ベデフィル』にまとまった記事があります:
グランプリ:アングレームで授与される最高の栄誉
作品に対して授与される各賞とは別に、作家の成し遂げた仕事に敬意を表して授与されるグランプリが存在します。
アングレーム国際漫画フェスティバル・グランプリ
Grand Prix du Festival d'Angoulême
2013年以降、選出方法が変わり、その後、毎年少しずつルールが変わっていますが、今年2015年度の第42回フェスティバルについては、事前に26名の候補者を選定し、そこからフランスで単行本が出版されている(翻訳を含む)世界中の作家たちが投票する方式になっています。26名の候補は以下のページからご覧いただけます。
http://grandprix.bdangouleme.com/11/liste-candidats.html(※)
そこから候補者が絞り込まれまして、最終選考に残っている候補者は
イギリス出身のコミックス原作者 アラン・ムーア
ベルギー出身のBD作家 エルマンHermann
日本のマンガ家 大友克洋
の3名となっています。
はたしてグランプリの栄冠は誰の手に!?
また、1月7日の襲撃テロ事件を受けて、「グランプリ特別賞」をシャルリー・エブド紙に授与することが決まりました。
グランプリ受賞作家の発表は、例年フェス最終日夜の閉会式(各賞授賞式も兼ねる)に行われてきましたが、今年は会期初日(1月29日)夜[現地時間]に公表され、「グランプリ特別賞」も同時に授賞されることとなりました。
ちなみに過去のグランプリ受賞者は以下のページからご覧いただけます。
http://www.bdangouleme.com/231,jean-c-denis-2012
日本でも有名なジャン・ジロー=メビウスやエンキ・ビラル、フランソワ・スクイテンなどが過去にグランプリを受賞しています。
グランプリ受賞者は翌年のポスター制作を依頼されるのですが、過去のポスター一覧は以下のページからご覧いただけます。
http://www.bdangouleme.com/203,les-affiches-du-festival
※ グランプリ候補作家・全26名
クリストフ・ブラン Christophe Blain(フランス)
クリスチャン・ビネ Christian Binet(フランス)
チャールズ・バーンズ Charles Burns(アメリカ)邦訳版あり
ダニエル・クロウズ Daniel Clowes(アメリカ)邦訳版あり
ニコラ・ドクレシー Nicolas de Crécy(フランス)邦訳版あり
ピエール・クリスタン Pierre Christin(フランス)※
コゼ Cosey(スイス)
エティエンヌ・ダヴォドー Étienne Davodeau(フランス)
エディカ Edika(エジプト)
エマニュエル・ギベール Emmanuel Guibert(フランス)邦訳版あり
エルマン Hermann(ベルギー)
アレハンドロ・ホドロフスキー Alejandro Jodorowsky(チリ)※邦訳版あり
キノ Quino(アルゼンチン)
スタン・リー Stan Lee(アメリカ)※邦訳版あり
ミロ・マナラ Milo Manara(イタリア)邦訳版あり
松本大洋(日本)
ロレンツォ・マットッティ Lorenzo Mattotti(イタリア)
アラン・ムーア Alan Moore (イギリス)※邦訳版あり
大友克洋(日本)
マルジャン・サトラピ Marjane Satrapi(イラン)邦訳版あり
ジョアン・スファール Joann Sfar(フランス)邦訳版あり
ビル・シエンキーウィックツ Bill Sienkiewicz(アメリカ)
谷口ジロー(日本)
リチャード・コーベン Richard Corben(アメリカ)
ジャン・ヴァンナム Jean Van Hamme(ベルギー)※
クリス・ウェア Chris Ware(アメリカ)邦訳版あり
※ 漫画原作者
各賞紹介
アングレーム国際漫画祭ではさまざまな作品に賞が授与されます。
主なセレクションは以下の5つです。
公式セレクションSélection officielle
ミステリ作品セレクションSélection Polar
遺産賞セレクションSélection Patrimoine
子ども向け作品賞セレクションSélection Jeunesse
オルタナティブ・セレクションSélection Bande dessinée alternative
詳細については「アングレーム漫画セレクション」のエントリーをご覧ください。
この5つのセレクションから9つの賞が選ばれます。賞の受賞者はトロフィーを受け取りますが、BD作家ルイス・トロンダイムがデザインしたフェスティバルのマスコット「フォーヴ(野獣)」の形をしています。
© FIBD/9eART+ : photo J.F Alvarez
各賞の詳細は以下の通りです。
最優秀作品賞(金のフォーヴ)
Fauve d'Or – Prix du Meilleur Album
審査員特別賞(アングレームのフォーヴ)
Fauve d'Angoulême – Prix Spécial du Jury
シリーズ賞(アングレームのフォーヴ)
Fauve d'Angoulême – Prix de la Série
新人賞(アングレームのフォーヴ)
Fauve d'Angoulême – Prix Révélation
※新人賞は刊行作品が3点以下の作家が対象です。
ここまでの4賞はアングレーム審査委員会Grand juryが選出します。
アングレーム審査委員会は以下のメンバーから構成されています。
グウェン・ド・ボヌヴァルGwen de Bonneval、審査委員長、作家, président, auteur
マチュー・シャリエMathieu Charrier、ジャーナリスト
ジャン=リュック・コータレムJean-Luc Coatalem、小説家
ロランス・ル・ソーLaurence Le Saux、ジャーナリスト
フィリップ・フォジェールPhilippe Faugère、書店員
ジャナ・ジャコベックJana Jakobek、フメット国際コミックス企画ディレクター(スイスのルツェルンで行われる漫画フェスティバル)
ヌマ・サドゥールNuma Sadoul、作家
キュルチュラ読者賞(アングレームのフォーヴ)
Fauve d'Angoulême – Prix du Public Cultura
※オフィシャル・セレクションの中からあらかじめ選考委員会が選んだ8作品の中から、読者投票によって選出
キュルチュラ読者賞対象作品
http://www.bdangouleme.com/435,selection-prix-du-public-cultura?id_selection=22&id_prix=2
SNCF(フランス国鉄)ミステリ作品賞(SNCFミステリの野獣)
Fauve Polar SNCF
※独自の審査員団によって選出
遺産賞(アングレームのフォーヴ)
Fauve d'Angoulême – Prix du patrimoine
※Grand juryによって選出
子ども向け作品賞(アングレームのフォーヴ)
Fauve d’Angoulême – Prix jeunesse
※8歳から12歳の子供で構成された審査員団によって選出
Fauve d’Angoulême – Prix de la bande dessinée alternative
※アマチュア作家による作品を対象。独自の審査員団によって選出
これらの各賞の発表・授賞式は、「子ども向け作品賞」を除き、フランス時間の2月1日(日)16時になります。「子ども向け作品賞」は、下で紹介する賞と同時に、1月29日(木)18時に発表されます。
アングレーム国際漫画フェスティバルには、これらの賞以外にも子ども向け作品及び若年作家を対象にした賞がいくつも存在しています。
学生漫画コンクール“BD学校賞”
Prix du concours de la bande dessinée scolaire «À l’école de la BD»
・グラフィスム賞Prix du Graphisme
・シナリオ賞Prix du Scénario
・学生BDアングレーム賞 Prix d'Angoulême de la BD Scolaire
※独自の審査員団によって選出
未来の作家たち賞
Prix Jeunes Talents
※まだ作品を発表したことがない、“未来の作家たち”展に出展している20人の若い作家を対象。
ポワトゥー=シャラント未来の作家たち賞
Prix Jeunes Talents Poitou-Charentes
※“未来の作家たち”展に出展している20人の作家で、ポワトゥー=シャラント在住者を対象。
ブログ新人賞
Prix Révélation Blog
※フランス、ベルギー、スイス在住、17歳以上の、フランス語でブログBDを発表する作者を対象。応募者は読者投票で40人にまで絞り込まれ、そこから最終審査員団が3名に賞を授与
アングレーム小学生賞
Prix des Écoles d’Angoulême
※アングレームの小学校の4つのクラスの生徒(7歳~9歳)が5つの作品から選出
ポワトゥー=シャラント中学生賞
Prix BD des Collégiens de Poitou-Charentes
※ポワトゥー=シャラントの中学校の8つのクラスの生徒が5つの作品から選出
ポワトゥー=シャラント高校生賞
Prix BD des Lycéens de Poitou-Charentes
※ポワトゥー=シャラントの高校5つのクラスの生徒が5つの作品から選出
はたしてどの作品が各賞を受賞するのでしょうか? これもまたアングレーム国際漫画フェスティバルの楽しみの1つです。
アングレーム漫画セレクション
アングレーム国際漫画フェスティバルは、毎年さまざまな作品に賞を授与しています。
対象となるのは以下の要件を満たした作品。
前々年度の12月初めから前年度の11月末までにフランス語圏で刊行されたフランス語の漫画(他言語からフランス語に翻訳された作品を含む)。今年は2013年12月1日から2014年11月30日までに出版された漫画が対象となります。
もちろんこの期間中に膨大な作品が出版されているわけですが、7人のメンバーからなる選考委員会が、作品を絞り込み、各セレクションのノミネート作を決定します。今回の選考委員会メンバーは以下の通り。
ニコラ・アルベールNicolas Albert、ジャーナリスト
シャルル・フェレラCharles Ferreira、書店員
トマ・ムリエThomas Mourier、アングレーム国際漫画フェスティバルスタッフ
ジャン=ピエール・ナカッシュJean-Pierre Nakache、書店員
フレデリック・ポテFrédéric Potet、ジャーナリスト
ジュリエット・サランJuliette Salin、ジャーナリスト
エジルダ・トリボEzilda Tribot、アングレーム国際漫画フェスティバルスタッフ
ちなみに選考委員は3年ごとに交代するそうです。
主なセレクションは全部で5つ。
公式セレクションSélection officielle
http://www.bdangouleme.com/548,selection-officielle?id_selection=22
ミステリ作品セレクションSélection Polar
http://www.bdangouleme.com/551,selection-polar?id_selection=25
遺産賞セレクションSélection Patrimoine
http://www.bdangouleme.com/550,selection-patrimoine?id_selection=24
子ども向け作品賞セレクションSélection Jeunesse
http://www.bdangouleme.com/549,selection-jeunesse?id_selection=23
オルタナティブ・セレクションSélection Bande dessinée alternative
http://www.bdangouleme.com/670,prix-de-la-bd-alternative-2015
※このセレクションの対象は日本で言うところの同人誌に近いかもしれません。
公式セレクションについては、ShoProBooksが運営する海外コミックについての情報サイト『BDfile(ベデフィル)』に日本語紹介がありますので、ぜひご覧ください。
http://books.shopro.co.jp/bdfile/2014/12/post-66.html
以上、各セレクションにノミネートされた作品を、アングレーム審査委員会やそれぞれの審査員団が吟味し、さまざまな賞が授与されることになります。各賞については別のエントリーを設けます。
大塚英志ワークショップ
『多重人格探偵サイコ』(作画:田島昭宇)、『黒鷺死体宅配便』(作画:山崎峰水)などで知られる著名なマンガ原作者・大塚英志さんが、今年のアングレーム国際漫画フェスティバルで2日間にわたってワークショップを行うそうです。ワークショップ初日は受講者に日本マンガの描き方をレクチャーしたのち、課題を課し、翌日、その課題を公開添削する模様です。
なお、日本の作家がアングレームでワークショップを行うのはフェスティバル始まって以来初とのこと。
ワークショップの模様
アングレーム国際まんが祭一日目が終了しました。写真は世界まんが塾の講義風景。定番の龍神沼の絵コンテ宿題も大塚先生より出されました。はたしてどんな龍神沼が出来上がってくるのでしょうか! pic.twitter.com/USS3hf8isO
— 世界まんが塾 (旧 未来まんが研究所) (@MiraiMangaLabo) 2015, 1月 29
二日目は大塚先生のトークショーに加え、世界まんが塾の添削も行いました。今回、宿題をして来て頂いた方々の絵コンテはレベルがとても高くて驚きました。ご参加頂いた方々、本当にありがとうございました! pic.twitter.com/JHPtd3zeDe
— 世界まんが塾 (旧 未来まんが研究所) (@MiraiMangaLabo) 2015, 1月 30
ワークショップ参加者には修了証書が!
Pour récompenser les stagiaires qui se sont prêtés à l'exercice, #Otsuka leur remet lui-même un diplôme en japonais! pic.twitter.com/QycAd3f9Il
— Le Fauve d'Angoulême (@actudufauve) 2015, 1月 30
トークイベント
アングレーム国際漫画フェスティバル会期中は、100を超えるトークイベントが行われます。フランス・ベルギーはもちろん、さまざまな国からやってきた作家たちが、さまざまなテーマをめぐり、講演、対談、ワークショップに臨みます。
主な出演者は以下の通り。
スペイン語圏:フアン・ディアス・カナレス、ルーベン・ペジェヘロ
フアン・ディアス・カナレスは『ブラックサッド』(大西愛子訳、飛鳥新社)シリーズの翻訳あり。
英語圏:ディラン・ホロックス、リチャード・マグワイア、ショーン・マーフィー、トム・ゴールド、ブライアン・ヴォーン、フィオナ・ステイプルズ
※トム・ゴールドは『ゴリアテ』(金原瑞人訳、パイインターナショナル)の翻訳あり。ブライアン・ヴォーンとフィオナ・ステイプルズは『サーガ(仮)』(椎名ゆかり訳、小学館集英社プロダクション)が近刊予定です。
フランス語圏:リアド・サトゥッフ、マチュー・サパン、ロワゼル、トリップ、カトリーヌ・ムリス、ブレヒト・エヴァンス、ウィルフリッド・ルパーノ、シャンタル・モンテリエ、アレックス・バルビエ、ファビアン・ニュリ、アヌーク・リカール、メッゾ、ジャン=ミシェル・デュポン、ニックス
※ロワゼルは『時の鳥を求めて』(セルジュ・ル・タンドル作、原正人訳、飛鳥新社)、アレックス・バルビエは『市長への手紙』(Takako Hasegawa訳、講談社)、ファビアン・ニュリは『わが名はレギオン』(ジョン・キャサデイ画、原正人訳、パイインターナショナル)の翻訳あり。